Lesson 3 — ロジック・DRAM・NANDの物理構造と製造方法

Level 1 2026-02-25 軸: 技術 / 構造 / 金流

同じ「半導体」でも物理構造が全く違う → 製造方法が違う → 作れる会社が違う → 投資先が変わる。

1. 3つの断面図 — 中身が全く違う

ロジック・DRAM・NANDは全て「トランジスタを使う」が、トランジスタの上に何を載せるかが根本的に異なる。

⚙️ ロジック(CPU / GPU)
配線層(Metal 10+)
配線層
配線層
配線層
配線層
── ここから上が配線(チップの大部分)──
🔌 トランジスタ層(計算する部分)
シリコンウェハ

核心: トランジスタは一番下の1層だけ。その上に10層以上の銅配線が積み重なる。800億個のトランジスタを正しく繋ぐ「都市の道路網」。

💾 DRAM
キャパシタ(コンデンサ)
電荷を溜める「バケツ」
高く細く立てる
── ここから上がキャパシタ ──
🔌 トランジスタ層(アクセス制御)
シリコンウェハ

核心: 配線層の代わりに背の高いキャパシタが立っている。1bit = トランジスタ1個 + キャパシタ1個。キャパシタを高く細く作る技術が勝負。

📀 NAND(3D)
── ワードライン(ゲート)──
── ワードライン ──
── ワードライン ──
── ワードライン ──
── ワードライン ──
── ワードライン ──
... 現在200層以上 ...
チャネルホール(垂直に貫通する穴)
シリコンウェハ

核心: 横に縮めるのではなく縦に200層以上積む。超高層ビルの建設。垂直に深い穴を開ける技術が勝負。EUVは不要。

2. 進化の方向が全く違う

3つの異なる進化戦略

ロジック(CPU/GPU) DRAM NAND
進化の方向 横に縮める(微細化) 横に縮める + キャパシタ技術 縦に積む(3D化)
プロセスノード
(2026年)
最先端: 3nm → 2nm 1-2世代遅れ: 12-10nm台
※独自表記: 1a/1b/1c nm
関係ない
積層数が指標: 200層→300層→400層
EUV必要? 必須(ASML依存) 一部で導入開始 不要
製造の核心技術 リソグラフィ
(パターン描画の精度)
成膜(デポジション)
(高アスペクト比のキャパシタ形成)
エッチング
(200層を貫通する深い穴開け)

💻 プログラミングで言うと

// ロジックの進化 = コードの最適化(同じ面積でより多くの処理)
function compute() { /* 3nm: 800億トランジスタ */ }
function compute() { /* 2nm: 1200億トランジスタ */ } // 同じ面積で1.5倍

// DRAMの進化 = データ構造の最適化(同じ面積でより多くの記憶)
class MemoryCell { capacitor_height: 10um → 15um → 20um } // バケツを高く

// NANDの進化 = データベースのシャーディング(横ではなく層を増やす)
layers = 128 → 200 → 300 → 400  // テーブルを増やすだけ。スキーマは同じ

3. 製造装置が違う → 投資先が変わる

物理構造が違う = 製造に使う装置が違う = どの装置メーカーが恩恵を受けるかが変わる

製造工程と装置メーカーの対応

製造工程何をするどの半導体で重要主要装置メーカー
リソグラフィ
(露光)
光でパターンを焼き付ける ロジック(最先端)
DRAM(一部)
ASML(EUV独占)
東京エレクトロン(コータ/デベロッパ)
エッチング
(削る)
不要な部分を化学的に除去 NAND(深い穴開け)
ロジック(微細パターン)
Lam Research
東京エレクトロン
成膜
(デポジション)
薄い膜を均一に積む DRAM(キャパシタ形成)
NAND(200層の積層)
Applied Materials
KOKUSAI ELECTRIC
東京エレクトロン
検査・測定 欠陥がないか確認 全て KLA
レーザーテック(EUVマスク検査)
CMP
(Chemical Mechanical Polishing)
表面を原子レベルで平坦化 ロジック(多層配線の平坦化) 荏原製作所
扶桑化学工業(研磨材)
テスト 完成品の動作確認 全て(特にロジック) アドバンテスト
テラダイン

投資的な意味: 「半導体装置メーカーに投資する」と一口に言っても、ロジック向き(ASML, レーザーテック)、DRAM/NAND向き(Lam, Applied Materials, KOKUSAI)、全方位(東京エレクトロン)で分かれる。どのメモリが伸びるかで恩恵を受ける会社が変わる。

📚 より詳しく

4. なぜ同じ会社が全部作れないのか

製造技術の専門分化

ロジック・DRAM・NANDは物理構造も製造装置も違う → 各社は1-2種類に特化している。

会社ロジックDRAMNAND備考
TSMC◎ 世界最強ロジック専業ファウンドリ
Samsung唯一の「全部やる」企業。だが全部で1位ではない
SK Hynix◎ HBM最強メモリ専業
Micronメモリ専業(米国唯一)
Intel△ 遅れ気味ロジック。ファウンドリ参入中
KioxiaNAND専業(旧東芝メモリ。NANDの発明者)

Samsungが「全部やる」唯一の企業だが、ロジックはTSMCに、DRAMはSK Hynixに、NANDはKioxia/WDと激戦。「何でもできる」は「何でも1位」ではない。投資判断では「何に特化しているか」が重要。

📖 このページの用語集

用語正式名称 / 意味一言で
リソグラフィLithography光でパターンを焼き付ける工程。ロジック製造の核心
エッチングEtching化学反応で不要部分を削る。NANDの深い穴開けに重要
成膜Deposition薄い膜を均一に積む。DRAM/NANDの積層に重要
CMPChemical Mechanical Polishing / 化学機械研磨表面を原子レベルで平坦にする
キャパシタCapacitor / コンデンサ電荷を溜める素子。DRAMの記憶の本体
アスペクト比Aspect Ratio幅に対する高さの比。DRAMキャパシタやNANDの穴で重要
3D NANDThree-Dimensional NANDメモリセルを縦に積層したNAND。現在200層以上
ワードラインWord LineNANDの各層のゲート電極。層数=ワードライン数
チャネルホールChannel Hole3D NANDで全層を貫通する垂直の穴
WFEWafer Fab Equipment / ウェハ製造装置半導体製造装置の総称。2026年は$145B規模
TELTokyo Electron / 東京エレクトロン日本最大の半導体製造装置メーカー。全工程をカバー

🧠 セルフチェック

Q1: ロジック半導体の断面で、チップの「高さ」の大部分を占めているのは何か?

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配線層(10層以上の銅配線)。トランジスタ自体は一番下の1層だけ。何十億個のトランジスタを正しく繋ぐ「道路網」がチップの大部分を占める。

Q2: DRAMとロジックで、物理構造の最大の違いは何か?

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ロジックはトランジスタの上に多層配線が載る。DRAMはトランジスタの上に背の高いキャパシタ(コンデンサ)が立つ。このキャパシタに電荷を溜めてデータを記憶する。

Q3: NANDフラッシュがEUVを必要としない理由は?

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NANDは横方向の微細化(パターンを小さくする)ではなく、縦方向に層を積む(3D化)戦略を取っているから。古い露光装置でも200層以上の積層が可能。

Q4: 「エッチング」が特に重要なのはロジック・DRAM・NANDのどれ? なぜ?

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NAND。200層以上を貫通する「チャネルホール」を開けるため、超深い垂直エッチング(アスペクト比100:1以上)が必要。だからLam Researchのエッチング装置が重要。

Q5: Samsungが「全部作れる」唯一の企業であることは、投資的に強みか?

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一概に強みとは言えない。ロジックではTSMCに、HBM(DRAM)ではSK Hynixにリードされている。「何でもできる」は「何でも1位」ではない。投資判断では各分野での競争力を個別に見る必要がある。